お知らせ・コラム

邂逅茶会

いよいよ東海地方までが梅雨に入りました。関東も雨がしとしとと降っています。
土曜日、日曜日と邂逅茶会を催しました。どうにかお天気ももってくれてお客様にご迷惑をお掛けしないですみました。いらして頂きました皆様有難うございました。
今回の茶会は、奇跡のような出会いがあった事から邂逅をテーマにいたしました。
もう10年、15年前に松花堂昭乗が描かれた寿老人の軸がうちに来てくれました。その寿老人は左を向いていらっしゃって落款は右に押してあります。主人はこれは双幅の左絵ではないかな?と思っていたようですが、対の右絵とは何百年前、何十年前に別れたのか?どこに行ったのか?何も分からない状態でしたから、右絵が見つかることは無いな!と諦めていたようです。それが有る時、これは、うちに有る寿老人の右絵じゃないか?と思われるものを見つけました。見つけた瞬間、鳥肌が立つような思いをしたようです。もしそうなら奇跡としか言いようがない!と箱を調べたり表具を調べたり、絵が右を向いていて落款が左にあるのを確認して、これは右絵だ!と確信したようです。双幅が揃ったのです。
これはこの双幅のお披露目の茶会をするしかない!と今回の邂逅茶会を催した次第です。
右絵には箒をお持ちの香巌智閑(きょうげんちかん、中国唐末の禅僧)禅師が描かれています。「香巌の一撃(一撃、所知を忘れず)」で有名な方です。百丈懐海(ひゃくじょうえかい)に師事、百丈懐海の遷化(せんげ)の後は潙山霊祐禅師に師事なさいます。潙山から「父母未生以前の一句(母の胎内にいた時の心境を言ってみよ)」との公案を出されます。非常に頭が良く、博識で理論的だった香巌は、あれこれ理論を考えて心境をぶつけてみるのですが、全て拒否されてしまいます。いよいよどうしようも無くなった香巌は潙山に、もうお教えください!と言うのですが、それは私の言葉であってお前の言葉ではないではないか!と教えてもらえずに落胆してしまい、今迄勉強してきたノート(画餅は餓えを充たさず、がべいはうえをみたさず)を焼き払い、祖師慧忠国師のお墓の掃除をしよう!と墓守になります。毎日毎日掃除をしながら過ごしますが、ある時落ち葉を掃いて竹藪に捨てます(え〜!竹藪に捨てていいの?と思った私)、その時に落ち葉の中に混じっていた小石が竹に当たり「カチーン」と音がしました、その音を聞いて「一撃所知を忘れず、更に修治(しゅうじ)を仮らず(からず)」と大悟なさいます。円覚寺の南嶺管長様が「学問が有るだの無いだの、性格だの経歴だの何の関わりもない、カチーンと鳴ったら、そのままカチーンと響く、ただカチーンなのです」と書いてくださっています。
難しい事です。私のような凡人はよく分かりませんが、以前建長寺で僧堂の和尚様方と雑談をしていて「坐禅をしていても、足が痛い!とか蚊がいる!とかブツブツ思っている私は坐禅をしている意味がないですよね」と言う私に、お一人の和尚様が「坐禅の途中に飛行機が飛ぶ音がするとして、飛行機のブーンという音がすると思うのは悟りですよ、その後その事について考えを巡らす事は悟りにはならないんですよ。坐禅をして、思いを巡らせない練習をしていると思ったらどうですか?」と教えてくださいました。この香巌の一撃の話しを聞いて、その時の和尚様のお言葉を思い出しました。有り難いお言葉だったのですね。
ちょっと香巌の一撃の話しが長くなってしまいました💦
松花堂昭乗の双幅は、きっと寿老人と香巌禅師お互いが強い想いで呼び寄せたのでしょう。
今、双子の孫の1人が入院しています。小学3年生ですから、もう1人の片われは、起きている間は片われが入院してしまったと分かっているのに、夜中に寝ぼけて「4号がいない!4号はどこに行ったの?」と探すのだそうです。双子にしか分からない何かで繋がっているのでしょうか?この双幅にもそれに似たような感じを受けました。揃って良かった良かった、万々歳です!
長くなってしまったので、道具組等は又なるべく早く書きますね。

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