お知らせ・コラム

小吸物の具

処暑も過ぎました。処暑は、老陽日に衰えて秋陰の気次第に増し、暑気すでに処(やむ)とす、依って斬く云う
暦便覧には、陽気とどまりて、初めて退き(しりぞき)やまんとすればなり
国立天文台では、暑さがおさまるころ
とあります。確かに今朝は涼しく感じました。来月8日には白露を迎えます。秋は確実に来ていますね。

スマホを新しくしました。もう以前のスマホからオンラインで頼むと自宅に送ってくれて便利です。わざわざdocomoショップ(docomoなので)に行って、長い時間待ったり変更作業に時間を取られたりする事が無くなりました。年々データ移行も簡単になって、SIMカードを入れ替えて30分もすれば使えるようになります。便利な世の中です。お婿ちゃんに頼めばあっという間にやってくれるのですが、その便利さを覚えてしまうともう「やって貰えば良いやぁ」と考えなくなってしまうのが怖くて、お婆さんはこのデジタル世界に取り残されないように必死に頑張っています。私の場合、どうにもならなければお婿ちゃんに電話すれば直ぐにとんで来て、どうにかしてくれるし……と云う安心感が有るので挑戦できるのかもしれませんが(笑)

小吸物は箸洗いと同じ意味です。ご飯、汁、向付、吸い物、焼物、場合によっては預け鉢、強肴が出て、亭主相伴の時間が終わった後に小吸物を用意して襖を開けて如何でしたか?のご挨拶の後に小吸物を持ち出します。次の八寸に向けて口の中をさっと濯ぎ、箸もさっと濯ぐ物(中にはこれ何?と思われそうな具と、うっすらと昆布味や梅干し味をつけています。殆どお湯みたいですが)です。箸も、と書いたりお話ししたりすると、小吸物の中にお箸を入れてグルグル洗われる方がいらっしゃいます(きっとこちらの説明の仕方が悪いのですね)が、中の具を掴む位で十分に濯げます。本当に小吸物の中でお箸をグルグル洗うとお行儀が悪く見えてしまうのでご注意くださいね。
小吸物の具にはいろいろな食材が有ります。松の実や蛸の子等々所謂珍味と云われる物も沢山有るのですが、うちではよく庭にある物を使います。
春は柳の新芽を使ったり、萱草(かんぞう)の花が咲くとまだ蕾の花弁を少し使ったり、日除けに植えているツタンカーメンと云うお豆のちっちゃな出たての葉っぱを使ったり、コロコロと出てきたムカゴを使ったりします。
日頃からちっちゃな庭を何か使える物ないかなぁ?と見て回ります。私はこれは食べられる!と知っていて使うのですが、娘はどうも信用できないらしく、私が取ってきた物をネットなんかで調べています(笑)そういう時には私が毒味しています。ですが、娘曰く「宗香先生のお腹はいまいち信用できないのよねぇ!」とやっぱり調べています。
茶道の家で料理し、茶道の懐石ですから、凝った物ではなくて季節の庭に生えている物を使うのも良いなぁ!と思っています。勿論珍しい物も喜ばれますからたまには使いたくなりますね。
私共が出した「お茶事ができる懐石レシピ」の小吸物の具には、
一月 結び昆布、梅
二月 土筆(先の方だけ)
三月 桃花弁
四月 花山椒
五月 蓬
六月 紫蘇
七月 じゅんさい
八月 とうもろこし
九月 菊花弁
十月 ムカゴ
十一月 菊花弁
十二月 りんご 
となっています。
枝豆だって、蓮の実、南瓜の種だって、もっともっと沢山有ります。
料理に季節の物を使うのは当たり前ですが、私は小吸物の具を考えている時が一番楽しいです。今の季節には何があるかなぁ?と外をブラブラしたり、本をめくったり。小さな小吸物の中に有る季節をお客様に感じていただけると、今日のお料理は成功だわ!と嬉しくなります。

ちょっと面白いお話し!娘が宗香先生と呼ぶのはお仕事の時だけです。
娘達はお客様の時には「お母様」、お弟子さんの前では「宗香先生」、普段は「マミー」(お婿ちゃん達もマミーです)。
何故マミーになったか!娘が生まれた時に両親をなんと呼ばせるか?と、普通じゃない方が嬉しい主人は「父上、母上」は?と!私は「恥ずかしいから絶対嫌だ!」じゃぁ、真ん中を取って「お父様、お母様にしよう」という事になりました。あんまり綺麗な格好をしていないスーパー等で「お母様!」と呼ばれると、どんなに恥ずかしかったか!そのうち外で「お母様」と呼ぶのが恥ずかしくなった娘達は、父親の事は「パピー」母親の事は「マミー」と呼ぶようになりました。どうして「パピーマミー」だったのでしょう?パピーはまたまた省略されて「パー」と呼ばれるようになりました(笑)お婿ちゃん達も「パー」って呼びます(笑)

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