お知らせ・コラム

イエズス会紋章

南蛮漆器と言われる漆器があります。16世紀から17世紀にヨーロッパの宣教師や商人が沢山来日しました。その人達が日本の漆器を気に入り、キリスト教の祭礼具や家具等に螺鈿等を使って漆器を作り、自分達で使ったり、輸出したりしたものの様です。

それはそれは綺麗で、華やかで、煌びやかなものです。

キリスト教の祭礼具にはイエズス会の紋章をあしらっている南蛮漆器が多くあります。聖書を置く台や聖餅(イエス様の身体を象徴するパン)入れ、聖餅入れは煙草盆に乗せるタバコいれに、見立てで使うには丁度良かったりしますので、見る機会も多いと思いますし、現代の塗物にもイエズス会の紋章入りの漆器が沢山あります。ついでに、主人が川瀬竹志さんの工房で、イエズス会の紋章をいたずら書き(絵付け)したぐい呑もあります。時々それで呑んでいます。

IHSの紋章(字を入れ替えると有名な旅行会社になりますね😅覚えやすいかもしれません)、の入った漆器は良く目にするので文様としては知っていましたが、イエズス会の詳しい事はよく知らないなぁ!と思っておりましたら、天正遣欧少年使節の映画?ドラマ?を見つけました。

美術史学者でいらした若桑みどり先生の御著書が原案のMAGIというドラマです。随分と精神性、当時のヨーロッパや日本の宗教状況、矛盾した考え方等も丁寧に作られているように思いました。

学校がキリスト教系だったので、天正遣欧少年使節の事は聞いておりました。ただ、子供の頃の事なので華やかな部分や荘厳な雰囲気だけの興味しかありませんでしたが、当然こんなに暗い部分、葛藤も有ったのだ!と思いながら見ていました。

帰国して、キリスト教が禁教になってからの少年達の生涯も過酷で心が痛みました。その中の一人は、私の故郷北九州で活躍なさった様です。そんな事も学生時代は知りませんでした。

このドラマを見ながら、久し振りに本当に何十年ぶりに、宗教の時間や牧師先生のお話によくよく出てきていた、「アガペーの愛(無条件の愛、無償の愛)」を思い出しました。子供の頃はその言葉を聞きながら、「言葉としては理解できるけど、どういう事なんだかなぁ?」と、仏教でも大乗仏教の「慈悲」の心を、茶道では「思いやり」の心を教えていただきましたが‥‥‥

汚い心も、羨ましいと思う心も、憎む心も沢山有る自分には、生涯こういう「愛」や「慈悲」や「思いやり」の心だけになる事はできないとは思いながらも、少しは近づける様にしたい!という気持ちを諦めてはいけないと考えさせられました。

このドラマを見ながら、これも何十年ぶりに、讃美歌「主われを愛す」を思い出し口ずさみました。

茶道で使われるお道具は、見立てなど楽しい事がいっぱいですね!1つのお道具からいろんな事を感じられるのも茶道ならではの様な気がします。

 

 

 

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